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bar Addict

author作者:かさねちえ
単発作品

晴(はる) バンドマンの彼氏がいる。 真(まこと) 『bar Addict』のマスター。 晴の彼氏とは幼馴染。喫煙者。 雪(ゆき) 晴の彼氏で真の幼馴染。名前だけ登場する。 キスシーンあります。

配役
110
予想時間30
文字数7778 文字

登場人物

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晴(はる) バンドマンの彼氏がいる。
真(まこと) 『bar Addict』のマスター。 晴の彼氏とは幼馴染。喫煙者。
本編
BGM:バー店内ミュージック、FI
「いらっしゃいませ」
「こんばんは」
「あら、晴ちゃん。いらっしゃい。今日は一人?」
「はい。雪くん、今日ここの近くでライブがあって、今打ち上げしてるから」
「一緒に行かなかったの?」
「…私、邪魔かなって」
「邪魔なんて、そんなことないでしょ。彼女なんだから」
「そう、なんですけどね…」
「座って」
「あ、はい」
「何飲む?」
「ん〜、どうしようかな」
「あんまりお酒は飲めないんだっけ?」
「飲む機会があまりなくて。だから、よく知らないんです」
「そう。ならアタシのオススメ、飲んでみる?」
「じゃあ、お願いします」
「ん、ちょっと待っててね」
真、カクテルを作り始める
「今日はお客さん、少ないんですね」
「さっきまで何組かいらっしゃってて忙しかったんだけどね。一気に引いて。
だから、晴ちゃんが来たのはベストタイミング」
「そうだったんだ」
真、カクテルを晴の前に置く
「はい、どうぞ」
「…なんて言うカクテルですか?」
「カシスソーダよ。飲みやすいと思うわ」
「あ、その名前、聞いたことあります」
「定番だからね」
「いただきます。…うん、美味しい」
「良かった」
「…真さんて、雪くんの幼馴染、なんですよね?」
「そうよ。雪とは小学校からの付き合いになるわね」
「そんな昔から」
「腐れ縁、ってやつね」
「打ち上げ終わるまでここに居たら、って雪くんに言われて。真さんが構ってくれるよって」
「アイツ…私はいいけど、彼女の面倒は自分で見なさいって感じよねぇ?」
「あはは。…あの…雪くん、今までもお付き合いしてた人、ここに連れてきたりしてたんですか?」
「え?」
「…あ…ごめんなさい」
「いいのよ、謝ることじゃないわ。そうね…アナタが初めてよ」
「…そう、ですか」
「安心した?」
「…嫌な女ですよね」
「どうして? 心配なんでしょ? 相手はバンドマンで、アイツ顔もいいものね。女性のファンもたくさんいるだろうし」
「…はい」
「…何かあったの?」
「…何か…というか。雪くんのファンって美人さんが多いから」
「あぁ、今日のライブのお客さん?」
「元カノっていう人が、来てたんですよね」
「そんなのイチイチ気にしてたら保たないわよ?」
「そう、ですよね…」
「…今の彼女はアナタでしょ。自信持ちなさい」
「自信…」
「好きなんでしょ? 雪のこと」
「…はい」
「なら堂々としてなさい。自信なさげにしてたら舐められるわよ?」
「…はは」
「ねぇ、カクテルには花言葉みたいなのがあるって、知ってる?」
「そうなんですか? 知らなかったです」
「今、晴ちゃんが飲んでるカシスソーダのカクテル言葉は、「あなたは魅力的」」
「…」
「晴ちゃんはもっと自分に自信を持っていいのよ?こんなに可愛くていい子なんだから」
「…優しいんですね、真さんて」
「やだ、お世辞だと思ってる? アタシ、お世辞なんて言わないわよ」
「…うん。ありがとうございます。
バーテンダーって、カクテル言葉も全部覚えてるんですか?」
「んー、人によるんじゃないかしら。
ただお酒を作るのが好きって人もいるし、そもそもレシピを覚えるだけで結構な量あるから」
「真さんは?」
「どうかしらね」
「あ、濁されたぁ」
「なぁに。アタシのことが知りたいの?」
「知りたい、って言ったら教えてくれるんですか?」
「企業秘密よ、小悪魔ちゃん」
「むぅ…真さんていつもそれ飲んでますよね」
「あぁ、これ?」
「なんて言うカクテルですか?」
「…シャンディ・ガフ」
「美味しいんですか?」
「ジンジャエールが平気なら飲みやすいと思うわ」
「シャンディ・ガフの、カクテル言葉は?」
「…さぁ。それ、引っかけのつもり?」
「バレちゃいました?」
「バレバレよ」
二人、軽く笑い合う
「…私も、飲んでみたいな」
「あら、それじゃあ作ってあげる」
「ありがとうございます」
真、カクテルを作り始める
「真さんて、キレイな顔してますよね」
「あら、ありがとう」
「…モテそう」
「それは…どうかしらね。ほら、アタシ、こんなんじゃない?」
「だからこそ、余計にモテそうです。色気があるっていうか」
「そうかしら」
「そうですよ」
真、晴の前にカクテルを置く
「はい、どうぞ」
「わ、ありがとうございます。いただきます」
「どう?」
「…うん、飲みやすい」
「良かった」
「これが、真さんがいつも飲んでる味、かぁ」
「アタシに興味があるの? お嬢さん」
「真さん、素敵な人だし…仲良くなりたいとは思ってますよ」
「やだ、調子に乗っちゃうわよ〜アタシ」
「乗ってくださいよ」
「…そんなに褒めても何も出ないわよ?」
「なんだ、残念」
二人、笑い合う
「…なんだか、久しぶりに笑いました」
「そうなの? いつでもウチにいらっしゃい。たくさん、笑わせてあげるわよ」
「じゃあ…通っちゃおうかな」
「うん、大歓迎。いつでもいらっしゃい」
「やったぁ」
「ふふ」
「…雪くんの小さい頃の話、聞いてもいいですか?」
「いいわよ。何が聞きたい?」
「どんな子だったんですか?」
「そうねぇ。割と静かな子、だったわね」
「へぇ、意外」
「でもアイツ、顔がいいじゃない?
だから中学生くらいからモテ始めて、そこから音楽に興味持って。高校生の時にバンドを組んだの」
「うん」
「でも楽器が苦手でさぁ。
それでもギター弾ける男はカッコいいからって、必死に練習してた」
「え、今あんなに上手いのに?」
「努力したのよ。意外でしょ?」
「そうだったんだ…」
「高校の文化祭でバンドの演奏してさぁ。
その後何人かの女子に告白されて、大変だったのよ?」
「その頃からモテてたんですね」
「ま、でも。いつも長続きしないのよね」
「そう、なんですか?」
「ドライっていうか。雪って興味のあることとそうじゃないことの差があるでしょ?」
「…」
「あ、やだ。晴ちゃんのこと、興味がないって言ってる訳じゃないのよ?」
「(苦笑)はい」
「でも音楽と恋愛の両立は、下手くそよね。アイツ」
「そうだと思います…。真さんは?」
「私? ひ、み、つ」
「え〜、教えてくれないんですか〜?」
「ミステリアスな方がイイでしょ?」
「…残念」
「…晴ちゃんはさ、アイツのどこを好きになったの?」
「え…恥ずかしいな」
「いいじゃない。聞かせて」
「…友達に連れられて行った初めてのライブで、雪くんと目が合ったんですよね」
「ふぅん」
「なんか、目が離せなくなって…そのライブ中、ずっと雪くんを見てた。
それからライブ通って、知ってもらって…」
「うん」
「雪くん、すごく優しいんですよ。
ファンの子にはみんな、そうなんでしょうけど」
「…」
「私。雪くんの顔、ドンピシャのタイプで。それに優しいし。
それで、電話番号渡したんです」
「へぇ」
「すごくドキドキしたの、まだ覚えてる」
「で。電話がかかってきた、と」
「はい。そしたら雪くんも、私のこと気になってたから嬉しいって。それで、付き合ってくれって言われて。すごく嬉しかったな…」
「…」
「あ、これ。前に、一緒に撮ってもらったやつなんですけど。
スマホカバーに挟んで持ち歩いてるんです」
晴、スマホのカバーに入れている二人で写ったチェキを見せる
「おぉー」
「これが、私たちの原点っていうか…(幸せそうに笑う)」
「…ほんと晴ちゃん、雪のこと好きなのねぇ」
「…はい(恥ずかしそうに)」
「…妬いちゃうわね」
「なんで真さんが妬くんですか」
「アタシの前でイチャイチャしないでよねぇ」
「あはは! イチャイチャなんてしてないですよ〜」
「…楽しそうにしてくれてて、良かったわ」
「はい。すごく楽しい。真さんと話せて良かった」
晴のスマホにInstagramの通知が来る
「ん、雪くん…これからカラオケに行くみたい」
「ちょっと…それ、ストーリーでアイツの動き見てるの?」
「…雪くん、あんまり連絡くれないから」
「はぁ…呆れた。今度叱ってやらなきゃ」
「ううん、いいんです」
「良くないでしょ? 我慢しちゃダメよ。
付き合ってるんだから、対等でいなきゃ」
「…対等か…難しいなぁ」
「もっとわがままになっていいのよ」
「…それも、難しいです」
「…困ったちゃんね」
「…あはは…
じゃあ今日は、これで帰ろうかな」
「雪、待ってなくていいの?」
「多分、酔って私のこと、忘れてると思うから」
「…(厳しい顔をする)」
「あ、でも。今日はライブで雪くん見れたし、少し話せたんで、いい日なんです」
「それって彼女って言えるの?」
「それは…言わないでください…
まだそこに、気付きたくないっていうか…」
「…そんな顔で帰せないわよ」
「…ごめんなさい」
「…どうしても帰る?」
「…ここにいたら、真さんに甘えちゃいそうだし…」
「いいのよ、甘えて」
「…真さん、優しすぎ」
「アタシに甘えるのは嫌?」
「…少し、困っちゃいます」
「どうして?」
「…魅力的な話すぎて」
「…ちょっと待ってて」
真、伝票に何かを書いている
「?」
「はい、これ」
「…これ」
「アタシの、プライベートのLINEよ」
「いいんですか? こんな…」
「いいの。お守り代わりに持っていて」
「…ありがとう、真さん…」
「うん。じゃあ、気を付けて帰ってね」
BGM:バー店内ミュージック、FO
BGM:バー店内ミュージック、FI
「いらっしゃいませ」
「…こんばんは」
「晴ちゃん…?
ごめんね、端っこの席になっちゃうけど。ここ、座って」
「ありがとうございます…」
「…何かあった?」
「え?」
「ひどい顔してる」
「…あぁ…」
「どうしたの?」
「…今日、雪くんと会う予定だったんですけど、忙しくてしばらく家に帰れないみたいで。
だから私、それじゃあ真さんの所に行こうかなって言ったら、いいんじゃない、って。
それきり、既読もつかなくて…
まぁ、それはいつもの事だから、いいんですけど」
「いつものことって…」
「でもさっき、ここに来る途中に…雪くん、見かけて」
「見かけて…?」
「歩いてたら偶然、みたいな」
「それで、声掛けなかったの?」
「…女性と一緒だったから」
「はぁ…それでそんな顔してんの。バカね」
「今までも、何回かあったんです」
「何回かって…」
「…」
「…晴ちゃんは、どうしたいの?」
「…どう、したいんですかね。分からないです」
「…心配してんのよアタシ。アンタ見てるとさぁ、不安になるのよ」
「…ごめんなさい」
「謝らなくていいわ。愚痴ならいくらでもアタシが聞いてあげるから」
「…ありがとうございます」
「カクテル、お任せでいいかしら?」
「お願いします」
真、カクテルを作り始める
「…真さんは、なんでバーテンダーやってるんですか?」
「アタシ? そうねぇ、バーテンダーってモテそうじゃない?」
「そんな理由なんですか?」
「それも、まぁちょっとだけね。あとは、アタシが作ったお酒で笑って欲しいのよ」
「笑って…」
「嬉しいじゃない? 自分発信で人を笑顔にできるのって」
「…うん。とても素敵なことだと思う」
真、晴の前へカクテルを置く。
「はい、どうぞ」
「…これは?」
「カミカゼ、よ」(あなたを救う)
「日本語なんですか?」
「アメリカ発祥のカクテルなんだけどね。
日本の、神風特攻隊が名前の由来になっていて、元気になって欲しい人に贈るカクテルなのよ」
「…ほんと。優しいなぁ、真さんは」
「一口飲んでみて」
「いただきます。…んっ!」
「元気になる味してるでしょ?」
「…ちょっと私には、アルコールが強いかもです」
「いいのよ。それを飲み干す頃には、笑顔になっていて欲しいの」
「…真さんが相手だったら、こんなに苦しい思い、しないんでしょうね」
「やだ、買い被りすぎよ」
「…真さんのお相手の方が羨ましいな」
「…いないわよ」
「ウソ」
「ウソじゃないわ。おあいにく様、モテないんでね。ずっとフリーよ」
「…」
「だからね、もし晴ちゃんがどうしようもなく辛いってんなら…アタシが力になるから」
「…本当に?」
「本当に」
「…泣きそう」
「やだ、泣かないでよ。アンタを笑顔にしたくて頑張ってるのにバカみたいじゃない」
「だってぇ…」
「…晴ちゃんは、どうしたい?」
「私…私、雪くんのこと、好きです」
「うん」
「でもね、苦しいんです」
「…うん」
「雪くんモテるし、最初は、それでもいいって思ってたけど…」
「…」
「なんか…苦しくて…」
「…」
「もっと好きになって欲しい、好きって言って欲しい…
もっと私を、必要と、して欲しかった…」
「…それじゃあ辛くて当然よ。
晴ちゃんは、よく頑張ってると思う」
「…でもね、この痛みも、愛おしく感じてしまって…手放せないんです」
「…バカねぇ」
「本当に。バカ、ですよね…」
晴、腕を上げたときにアザがチラと見える
「…そのアザ、どうしたの?」
「ぁ、(腕を隠す)」
「隠さないで」
真、晴の手を取り優しく撫でる
「…痛かったわね。アイツにやられたの?」
「…これ、は」
「気付いてたのよ。晴ちゃんがたまにアザ作ってくるの。
でも、聞くに聞けなくて…」
「…(ポロポロと涙が出る)」
「やだ、もう…〜〜〜っ!」
真、カウンターごしに晴の頭を抱き寄せる
「ほら」
「っ、真さんっ」
「よしよし…」
「は…恥ずかしいです…」
「いいのよ、アタシの店なんだから」
「でも…」
「端っこの席で良かったわ…アタシには、甘えていいのよ」
「…っ、うぅ〜(泣き出す)」
「よしよし」
晴、少し泣いて、二人のおでこが付く距離になる
「真さん…」
「…いいの? こんなに近づいて」
「…ダメ、ですか?」
「無防備すぎるわ」
「…無防備だと、どうなりますか」
「そうね…」
真、晴に優しくキスをする
「狼に食べられちゃうわよ」
「…真さん、あったかい…」
「晴も、あったかい。
酔った? お酒、強かったかしら」
「…真さん…」
「なぁに?」
「もう一回、キス、して…」
「いいわよ…」
「ん…」
真、晴に深い長いキスをする
店内BGM:FO
BGM:バー店内ミュージック、FI
「いらっしゃいませ、…晴ちゃん」
「…別れてきました」
「…そう。座って」
「はい…」
「よく頑張ったわね」
「…雪くんね、全然、引き留めてくれなかった」
「引き留めて欲しかった?」
「…」
「はぁ…忘れちゃいなさい」
「…忘れられますかね」
「アナタがそう望むなら」
「…忘れさせてください、真さん…」
「…ちょっと待っててね」
真、入り口に行きCloseの看板を出して鍵をかけて戻ってくる
「今日はもうおしまい。これで誰も来ないわ」
「いいんですか?」
「いいのよ。クズな男と別れられたお祝い、しましょ。二人で」
「酔わせてください、真さん…」
「嫌って言っても、やめてあげられないわよ?」
「いいです。それで…いいです…」
BGM:バー店内ミュージック、FO
SE:扉が開いて閉じる音
SE:歩く音
真、一人で外に出てくる
タバコに火をつけて電話をかける
SE:火をつける音
SE:電話のコール音
「…もしもし? アタシ。
もう、何回やれば気が済むのよ。
ほんと、昔から女を見る目がないんだから。
…感謝? バカ言わないで。
毎回アンタのケツ拭く身にもなって欲しいわ。
…ええ。そうね。まぁアタシ、顔はいいからねぇ。
あ、次は変なのに手を出すんじゃないわよ。
あの子、ウチの店で「DVされてんじゃないか」って噂されてたんだから。
アンタ、暴力なんてしないでしょうけど。外聞がいぶん悪いわよ。
…そんなことするような子だと思わなかったって?
だから見る目がないって言ってんのよ。
…ええ。それじゃいつもの額、振り込んどいて。
あ、前回みたいに遅れたら、もう引き受けてやんないんだから。
…はぁい。じゃあね」
SE:電話を切る音
真、タバコを吸って息を吐く
「…ほんと、バカねアタシも」
真、タバコを捨て、足でなじる
「…シャンディ・ガフ」(無駄なこと)