その他
弟くんの姉声監禁
警告・特記事項:叫び暴力表現
私が目を覚ますと、そこは見たことのない小屋の中。そして左足が鎖につながれていた――。 私のことが好きすぎる弟はいつも「愛しているよ」とささやきながら、鎖につながれた私をずっと監禁し続ける。 なぜ私を監禁するのか。時が過ぎてから弟が明かしたのは、理解しがたい恐ろしい理由だった。 ※グロ表現、暴力的表現あり。苦手な方はご注意ください。 ■台本使用について ・セリフや性別の変更 OK(いくらでもどうぞ) ・演者様の性別・人数 問いません。 練習用に全て一人で読むこともOKです。 ・アドリブ 歓迎 ■連絡先 X(旧Twitter)のリプかDM @kestnel pixivのDM @ausleze
配役
110
予想時間30 分
文字数9180 文字
登場人物
名前タップでセリフ抽出弟姉のことが大好き。
姉いつのまにか監禁させられていた。
本編
姉:ねえ。
弟:どうしたの姉さん。
姉:私のこと、好きなのよね。
弟:うん。好きだよ。
姉:愛してるのよね。
弟:もちろん。
姉:本当に、愛してくれてるのよね。
弟:僕は誰よりも姉さんのこと、愛してるよ。これまで何度も言ってきたでしょ。
姉:じゃあ――そろそろここから出してくれないかな、なんて……。
弟:ごめん、姉さん。まだ少し時間がかかりそうなんだ。だからもうしばらくこの部屋で待っていてくれないかな。
姉:しばらくって――何時間くらいかな。私、そろそろ仕事にいかないと……。
弟:仕事?
姉:派遣先の、会社……。
弟:ふふっ。姉さんも面白いウソをつくんだね。仕事なんてしてないでしょ。だって姉さんは大学生なんだから。
姉:じゃあ――じゃあせめて、この左足の鎖だけでも解いてくれないかな~なんて……。これがあると自由に動けないから。
弟:ごめん姉さん。少しのあいだガマンしてほしいんだ。鎖を解くと、姉さんの足が勝手に逃げ出しちゃうかもしれないから。
姉:足……?
弟:そう。足。だって姉さんの足じゃないんだもの。しかたないよね。
姉:(独り言のように)私の足じゃないって、どういうこと……。
弟:ん? どうしたの姉さん。難しい顔して。僕、なにか姉さんを悩ませるようなこと、言った?
姉:う、ううん。なんでもない。
姉:あのね――ここは、どこなの……?
弟:姉さんは知らなくてもいいよ。ただ僕を信じてくれればいいから。
姉:でも私、職場に行こうとして歩いてたのよ。それなのに気がついたら、このコテージみたいな部屋に入れられていて――。
弟:それは簡単だよ。ほら、これ。スタンガン、っていうの? これで姉さんを眠らせたんだ。
姉:スタンガン……!?
弟:で、姉さんを父さんの車に乗せて、山奥の誰も使ってないこの小屋まで運んできたんだ。
姉:ま、待って! まだ中学生よね。運転免許は……?
弟:免許? そんなの姉さんをここに連れてくるためなら必要ないよ。姉さんは僕の全てなんだから。法律だって許してくれるよ。
姉:そんな……。どうして私を閉じ込めるの? 鎖なんかでつなぐの……? 私、仕事にいかないと――
弟:また仕事? 姉さん、もしかして記憶があいまいになってるのかな。姉さんは、大・学・生。でしょ?
弟:確認するよ。姉さんの名前は、江里原舞(えりはら・まい)。さすがにこれは覚えてるよね。
姉:江里原、舞……? 江里原……。う、うん……。私は、江里原、舞。
弟:ちゃんと覚えてるね。フフッ。やっぱり僕の姉さんだ。
姉:うん……。私は、あなたの姉。ねえ、だからお願い、ここから出して! 私のこと、大切に思ってくれてるんでしょ……?
弟:大切に思ってるからこそだよ。これも姉さんのためなんだ。姉さんなら僕のこと、信じてくれるよね。だってあれだけ長い時間を僕と過ごしたんだもの。
弟:――あっ、もうこんな時間。行かなくちゃ。姉さん、愛してるよ。だからおとなしくしててね。
姉:あっ、ちょっ――待って! 私をここから出して、ねえ……!
(弟、小屋を出ていく)
姉:(語り)三日後
弟:姉さん、もう夜だね。そろそろ僕、食事をつくるよ。
弟:姉さんは今日、何が食べたい? この業務用の大型フリーザー。用意するの大変だったんだけど、おかげでたくさん冷凍食品が入るんだ。唐揚げ、ギョウザ、パスタ、焼きおにぎり。ほかにもいろいろあるよ。
姉:……ねえ。
弟:いつも冷凍食品ばかりでごめんね。でもこの小屋、キッチンがないからしかたないんだ。本当は僕が姉さんのために手料理を作ってあげたいんだけど……。
弟:姉さんは知らないと思うけど、僕、姉さんに食べてもらうためにずっと料理の練習をしてたんだよ。自信作はオムライスかな。キノコを入れたバターライスを、ふわとろの卵で包むんだ。フフッ。今度食べさせてあげるね。
姉:ねえ。
弟:じゃあ今日は、たらこパスタにしよっか。姉さん明太子好きだもんね。まあ冷凍じゃ、姉さんの舌には合わないかもしれないけど。でも最近の冷凍食品って、ほんとにおいしい――
姉:ねえ!
弟:なに、姉さん。
姉:もう四日目よ……。いつまで私をここに閉じ込めておくつもり……?
弟:僕の気が済むまで。
姉:気が済むまでって――。
弟:フフッ。冗談だよ、姉さん。そうだなあ。あと一週間くらいかな。予定通りなら。
姉:一週――ウソでしょ……?
弟:しかたないよ。これも姉さんのためなんだ。僕を信じて。
姉:信じてって……。なにも教えてくれないのに、なにを信じたらいいのよ……!
姉:ねえ。いい加減教えて。どうして私をこんなところに閉じ込めるの……?
弟:フフッ。怒った姉さんの声もカワイイよ。
姉:ごまかさないで! マジメに答えて!
弟:マジメだよ僕は。最初からずっと。姉さんのためなら、僕は命だって懸けられるんだから。っていうか、もうすでに懸けてるけどね。だからもう少しだけ待っていてほしんだ。僕の愛する姉さん。
弟:――あっ、電子レンジの音だ。パスタができたみたい。さ、一緒に食べよ。
姉:……一体……。どうすればいいの……。
姉:(語り)一週間後
姉:私がここにつれてこられてから、もう何日たったんだろう……。
姉:ずっと同じ部屋に閉じ込められたままで、毎日寝て起きて食べるだけ……。もう、今日が何日かもよくわからない……。もう限界……。
(扉を激しく開ける音)
弟:(不機嫌そうに)失敗した……。
姉:――えっ。
弟:うまくいかなかった……。くそっ。
姉:どうかしたの。
(扉を閉める)
弟:ごめん、姉さん。姉さんにガマンしてもらうの、もう数日延びそうだ。
姉:えっ? そんな――!
弟:予想外だったな……。今日に限っていつもと違う道を通るなんて……。
姉:なんの話……?
弟:ううん。姉さんには関係ない。いや、関係あるんだけど、なんて言えばいいのかな……。まあ気にしないで。
姉:また……なにも教えてくれない……。ねえ。
弟:どうしたの姉さん。
姉:もう今日で何日目よ……。十日以上たってるんじゃない……?
弟:それがどうかしたの。
姉:どうかするわよ……! いつまで私を閉じ込めておくつもりなの……?
弟:もう少しだから。もう少しの辛抱だよ、姉さん。
姉:そう言ってずっと引き延ばすのね……。私のこと好きだとか愛してるとか言って、やってることはただの監禁じゃない……! それが好きな人にすることなの?
弟:姉さん、わがまま言わないで。
姉:なにがわがままよ! もうイヤ。もう限界……! なんでこんなことするの。理解できない。いい加減にしてよ……!
姉:なにも教えてくれないし、なにをしているのかもわからない! 狂ってるわ……。こんなの狂ってる……! 頭おかしいんじゃないの……!
(間)
弟:僕の姉さんは――。
姉:えっ……?
(弟、姉を蹴りつける)
姉:痛っ!?
弟:(何度も蹴りつけながら)僕の姉さんはそんなこと言わない! 僕の姉さんはそんなこと言わない!
姉:痛いっ!
弟:(何度も蹴りつけながら)どうしてそんなこと言うんだ! 僕はいつだって姉さんのことを愛しているのに! 姉さんのことしか考えてないのに! 姉さんのためにやってるのに!
姉:やめて! 蹴らないで! 痛いっ! 痛いっ……!
弟:はあっ、はあっ、はあっ……。――あっ。
(苦悶する姉)
弟:ご、ごめん、姉さん。僕、どうかしてた……。ごめんね、痛かったよね。ごめんね……。今日はうまくいかなかったから、ちょっと気が変になってたんだ。ごめん、姉さん。だから泣かないで……。姉さん。僕は姉さんのこと、誰よりも好きだから……。本当だから。
姉:うう……。
弟:ごめんなさい、本当にごめんなさい……。ああダメだ……。やっぱり僕はダメな弟なんだ……。この足のせいだ――全部この足が悪いんだ……! ――ぐうっ!!
(弟、右足に小型ナイフを何度も突き刺す)
弟:こんな足さえなかったら! こんな足さえ! ううっ……!
姉:えっ? 血……?
姉:――あっ!? な、なにしてるの!
弟:ああ、姉さん。姉さんを蹴った僕の右足に罰を与えてるんだ。また姉さんを蹴らないように。
姉:や、やめて! 右足が血だらけよ! もうやめて……!
弟:このくらい、姉さんが味わった痛みに比べればたいしたことないよ……。
弟:でも姉さんって本当に優しいね。フフッ。痛みが吹き飛んじゃった。
姉:あなた、やっぱり狂ってるわ……。
弟:うん。姉さんに狂ってるんだ。いままでもこれからも、ずっと。だから許して姉さん。愛してるよ。心から愛してる……。
姉:(語り)半月後
姉:(魂の抜けた様子で)う……。
姉:私……いつまで……。
(扉が開く)
弟:ついに手に入ったよ! よかったー!
姉:……え?
弟:最後のがやっと手に入ったんだ。これをフリーザーに入れて、と。よし。これで全部そろった! 今日はお祝いだね、姉さん!
姉:……いまの。わきに抱えていたの、なに……?
弟:いまの? もちろん、姉さんだよ。
姉:姉さん……? わた、し……?
弟:そうだよ。最後は思ったより手こずったなー。右足もケガしてたし、なかなか僕の思う通りにいかなかったよ。でも手に入ってよかった!
姉:私――ここから、出られるの……?
弟:えっ? フフッ。姉さん、なに言ってるの。僕との生活はいまからがスタートでしょ。
姉:え……。え……? 出られないの……? ウソ、ついてたの……?
弟:ウソなんかついてないよ。僕は姉さんに「ここでガマンしててね」って言っただけだよ。
姉:そんな……。
弟:それにここまで時間がかかったのは、そもそも姉さんが悪いんだよ。僕に黙って隠れたりするんだから。
姉:隠れて……? なにを言ってるの……? 隠れてなんかない……。私はずっとここにいた……。
弟:だって隠れてたでしょ。だから僕がこうして苦労してるんだもん。
姉:また……またわけの分からないことを……。
姉:――やめよ。もうやめた。
弟:えっ。なにをやめるの……?
姉:初日からあなたの話に合わせて姉のフリをしてきた……。そうすればあなたは私に危害を加えないと思ったから……。でも、もういい。
弟:姉さん、なに言ってるの……?
姉:だいたい――だいたいあなた、だれなのよ!!
(間)
弟:落ち着いてよ姉さん。
姉:姉さんじゃない! 私はあなたの姉じゃないし、あなたは私の弟じゃない! 私に弟なんていない! それなのに、なんで私のことを姉さんなんて呼ぶの……!?
弟:姉さん、また記憶があいまいになってるね。姉さんの名前は江里原舞。大学三年生。僕の大好きな、世界でたった一人の姉さんだよ。
姉:違う……! 私はその人じゃない! 私の名前は田中由奈(たなか・ゆな)! あなたとは会ったこともないし、なんの関係もない! ただ仕事に行く途中にあなたに連れ去られた、赤の他人よ!!
弟:フフッ。姉さん混乱してるね。でも無理もないか。姉さんとは頭が違うもんね。
姉:頭……? なんなの……。一日目からずっと訳の分からないことばかり言って……。「私の足が逃げ出す」とか「だまって隠れたり」とか――もうたくさん……!
弟:大丈夫だよ姉さん。頭を載せ替えれば、ちゃんと記憶が戻るから。
姉:載せ替える……? どういうこと……?
弟:姉さんはまだ姉さんになりきっていないから、元の姉さんの記憶が戻ってないんだ。ちゃんと全部の体をつなげれば姉さんになるから。大丈夫だよ。
姉:体を、つなげる……? なにを言っているの……?
弟:半年くらい前、姉さんが僕の前から突然いなくなったでしょ。しばらくしても帰ってこなかったからどうしたんだろうと思っていたら、街で街頭アンケートをしてた女の人の腕を見て、気づいたんだ。これは絶対姉さんの腕だって。
弟:だって指の長さとか血管の通り方とか、完全に姉さんと同じなんだよ。危なかったなー。あやうく見逃すところだったよ。フフッ。姉さんも意地悪なんだから。
姉:それって――。
弟:そう。姉さんは自分の体をバラバラにして、他の人の体の一部になりすましたんだよね。どうりで見つからないわけだよ。
弟:姉さんって子どものころから、かくれんぼが好きだもんね。前から思ってたけど、姉さんっておちゃめなところあるよね。僕、笑っちゃった。
姉:ひょっとして、あなた――その街頭アンケートの人の腕――。
弟:うん。切り取ったよ。もちろん殺してからね。
姉:(青ざめる)殺してって――うそ……。ウソでしょ……?
弟:ウソじゃないよ。なら見てみる? フリーザーに入ってるから。これだよ。よいしょ……っと。
(弟、フリーザーから腕を取り出す)
弟:ほらみて。これが姉さんの右腕。
姉:ちょっと待って……。それ、マネキンじゃないの……?
弟:マネキン? なにを言っているの。これは姉さんの腕だよ。ほら、これが切断面。
姉:うっ……!
弟:隠れるために自分の体をバラバラにして他の人の一部になるなんて、姉さんよく考えたよね。僕、ちょっと感動したんだよ。
弟:でも集めるのが本当に大変だったな。一か所集めるのに一人殺さなくちゃいけなかったから。ほら、こっちが姉さんの左腕でしょ。で、これが右足。
姉:うそ……。みんな――みんな殺したの……?
弟:うん。殺したよ。みーんな殺した。そうしないとうまく切り取れないでしょ?
弟:それでこれが……(少し重そうに)よいしょっ! 胴体。
姉:ひっ!?
弟:(楽しそうに)みてみて。胸のサイズも腰のくびれも、姉さんなんだよ? あ、ここ、鎖骨のところのホクロ。これで僕、ピンときたんだ。この体は姉さんのだって。肩の流れるようなラインもぴったり。フフッ。
弟:それからこれが顔なんだけど。……あれ? どこにいったかな……。顔が一番大変だったな。姉さんみたいにキレイな人、この世にいないと思っていたから。この姉さんに出会ったときは感動したなぁ。
弟:あ、あった。ほら、これが姉さんの顔だよ。みてみて。すごいでしょ?
姉:(息を呑む)
姉:うっ――!(生首を見て吐き気をもよおす)。
弟:(不満そうに)どうして姉さんの頭をみてイヤな顔をするの。こんなにキレイな顔なのに。
姉:ゲホッ、ゲホッ……。そんな……生首、なんて……。
弟:生首じゃない。姉さんの顔。死体みたいに言わないでよ。
姉:どうして……。そんなのを集めて、どうするの……?
弟:いまは凍ってるけど、解凍して全部の体をつなげれば、元の姉さんに戻るんだ。そうでしょ? 姉さん。
姉:戻るわけないじゃない……。それはただのバラバラ死体よ……!
弟:姉さん、やっぱり記憶があいまいになってる。フフッ。頭が姉さんじゃないから、しかたがないね。いまはバラバラだけど、つなげればちゃんと姉さんになるから。心配しないで。
姉:……狂ってる。あなた……狂ってる……!
弟:ひどいなあ姉さん。まだ姉さんには理解できないだけだよ。だっていまは姉さんの頭じゃない、別人の頭だからね。
姉:あなたのお姉さんは――死んだの……?
弟:姉さんが死ぬはずないでしょ。姉さんはかくれんぼをしてるんだよ。僕に黙ってこっそり。自分の体をバラバラにすれば、僕に見つからないだろうって思ったんだね。
弟:でも僕が世界一好きな姉さんの体のこと、知らないはずないよね。姉さんのことなら頭のてっぺんからつま先まで全部知ってる。フフッ。
姉:……違う。あなたのお姉さんは……もうこの世にいないわ。
弟:えっ? どうして……?
姉:江里原舞っていう名前。どこかで聞き覚えのある名前だと思ったの……。最初に聞いたときは、あなたに話を合わせた方がいいと思って、私が江里原舞だって言ったんだけど……。いまあなたが手にした顔をみて思い出したわ……。
姉:二か月前、運転免許を取りたての大学生が高速道路であおり運転を受けて運転を誤り、他の車と接触して横転。そこへ大型ダンプが突っ込んできて――車は目をそむけたくなるくらいグシャグシャになって、運転していた大学生は即死。その人の名前が、江里原舞だった。
弟:……なんで。
姉:顔写真も覚えてる。いまあなたがみせた生首――あなたが言うお姉さんそっくりの人の顔が、その人だった。
弟:(動揺して)なんで。なんで……?
姉:全国の読者ウケする事件や事故の記事を集めてネット記事として上げる。それが私の派遣先、ネットニュース運営会社での仕事だったから。交通事故もよく取り扱ってた。あの事故は特にひどかったから、たまたま覚えてたの。
弟:――違う。
姉:違わない。証拠ならいくらでもネット上に転がってるわ。あなたはそのことからずっと目をそらそうとしてるだけよ! あなたのお姉さんはもう死んでる!
弟:(被せて)死んでない!! 僕の姉さんは死んでない! 死ぬわけない!
弟:姉さんは死んでない。姉さんは死んでない。姉さんは死んでない姉さんは死んでない姉さんは死んでない姉さんは死んでない姉さんは死んでない姉さんは死んでない姉さんは死んでない姉さんは死んでない姉さんは死んでない姉さんは死んでない
弟:ううう――
姉:お願い。認めて。こんなことをしても、あなたのお姉さんは戻ってなんかこない。お姉さんの死を受け入れないと、あなたが不幸になるだけよ!
弟:――フフッ。フフフッ!
姉:えっ……?
弟:やっぱり。姉さんはそこにいるじゃないか。
姉:――どういう意味?
弟:姉さんはいつだって優しくキレイな声で、僕のことを励ましてくれた。学校でイジメられていたときも、親にひどく殴られたときも、僕のことを守ってくれた。あなたが、姉さんだ。
姉:違う! 私はあなたのお姉さんなんかじゃない! 目を覚まして!
姉:残っているのは左足だったわね。でも私の左足を切り取ってつなげたって、あなたのお姉さんは絶対に戻ってこない! そんなことをしたって、死んだ人間は生き返らないのよ!
弟:なにを言っているの。左足はここにあるよ。
(フリーザーから左足を取り出す)
弟:さっきとってきたばかりのこれ。これが左足だよ。ようやく手に入れたんだ。キレイな姉さんの左足。白い肌、丸い爪。小ぶりでかわいいくるぶしの形……。ああ、これは姉さんの左足だ……。
姉:どういうこと……? それで体は全部そろってるわよね。
姉:じゃあ、私は……? 私はなんで閉じ込められていたの……?
弟:フフッ。フフフッ。フフフフフッ。
姉:ねえ、答えて! どうして私は、あなたに監禁されなきゃいけなかったの!?
弟:(嬉しそうに)そうそれ。それそれ。フフフッ!
姉:え?
弟:姉さんの声だ。
姉:……声?
弟:本当は頭がそうだったらよかったんだけど、姉さんの頭の人の声、全然姉さんじゃなかったんだ。姉さんが元に戻っても声が違ったら、それは姉さんとはいえないでしょ? 苦しんでた僕をずっと励ましてくれた姉さんの声が別人だったら――それはもう僕にとって姉さんとは呼べない。そう思わない?
姉:私の声が――あなたのお姉さんと、似てる……?
弟:ちがうちがう。似てるんじゃなくて、姉さんの声なんだよ。さすが姉さんだね。ノドだけ別の人に隠すだなんて。手が込んでるよ。
姉:じゃあ――どうして私だけ、すぐに殺さなかったの……?
弟:だって頭や体はこうして冷凍してても眺められるけど、声はノドを切り取っちゃうと聞こえなくなるでしょ? 僕は他の体を集めてるときも、毎日姉さんの声を聞きたかったんだ。そのほうがやる気も出るからね。だからいままで生かしておいたの。
姉:そんな……。そんな……!
弟:ああ……この一ヶ月、姉さんの声が聞けて幸せだったよ。ありがとう姉さん。
姉:ダメ……! 私は、あなたのお姉さんじゃない……。
弟:そう、その声、その声! そのノドを頭につなげれば、戻ってきた姉さんの声もきっと姉さんになるはずだよね。
姉:え……? ちょっと……何持ってるの……?
弟:これ? ヒートナイフ。これがあると、うまく人間の体を切れるんだ。
姉:うそ……。うそよね……? 冗談よね……? やめて……やめて……!!
弟:やっと完成するよ。姉さん待っててね。いま元に戻してあげるから。僕だけの姉さん。僕だけの姉さん。僕だけの姉さん――。
姉:いや、やめて……。こないで……! やめてええええええええ!!!
弟:フフッ。いい声。
弟:っていう話を書いてみたんだけど、どうかな姉さん。
姉:弟くん……。ほんとにこれ、弟くんが書いたの?
弟:うん、もちろん。これなら姉さんに喜んでもらえると思って。
姉:次のコミケに出す同人誌のストーリーが煮詰まってたから――
弟:見るに見かねた僕が、姉さんの代わりにストーリーを作ったんだよね!
姉:確かにクセが強いストーリー書いて! ってお願いしたけど――うーん……ちょっとハードかなー。
弟:え、そう? やっぱり毎日冷凍食品食べさせるのって残酷すぎるかな。
姉:いやそこじゃなくて……。とにかく私がマンガにするには、ハードルが高いっていうか、読者に受け入れてもらいにくいっていうか、やりすぎっていうか、グロいっていうか……。ごめん、弟くん! もういっかい考え直してきてくれない?
弟:えー。うーん……わかったよ姉さん。じゃあ今度は姉さんを森の中で木に縛って一ヶ月。
姉:だからお姉ちゃんを題材に危険な行為に及ぶのやめてくれないかなー?
弟:でも僕、基本姉さんのストーリーしか浮かばないよ? それにいま姉さんがほんとに事故で死んだら、僕この話の弟と同じことするから――
姉:(電話)あ、由香里? わかった。外、出るね。
姉:ごめん、友達来たから。弟くん。次、期待してるね!
弟:……はあい。