配役
003
予想時間20 分
文字数6276 文字
登場人物
名前タップでセリフ抽出警察官河川敷で怪しい会話を聞いちゃった人
倉島河川敷で劇してたら職質受けた人(作中男性)
時雨劇の相手が職質受けちゃった人
本編
:(演者およびリスナーの方々へ。この劇の会話は"劇中でミュートが出来ていない"ことを想定して書いています。ミュート非推奨ではありません。予めご了承ください。)
倉島:河川敷で劇してたら職質受けた人
時雨:劇の相手が職質受けちゃった人
警察官:河川敷で怪しい会話を聞いちゃった人
:(本編は、以下から始まります。)
倉島:......我が契約の元、汝に決闘を申し込む。我は水天流が誇る剣闘士、ミツルギ!
時雨:(通話)我はマギ・レファイラを師とする法術士、ネロ!......決闘に応えよう、ミツルギ。
倉島:我が剣の錆にしてくれる。では──尋常に。......勝負ッ!!
時雨:オール・オア・ナッシング。己の全てを懸けて、私に挑んで来いッ!!
倉島:てやぁぁぁあああ!!!
時雨:はぁぁぁあああ!!!
:(人があまり通る事のない、早朝の河川敷。倉島はベンチに腰掛けながら、アプリを介して時雨と"声劇"をしていた。するとそこへ、警察官が現れる。)
警察官:......なんだ、あの人?
倉島:我が剣技、受けてみよ!水天流奥義、乱舞・凪!!
時雨:これは......まるで、暴風雨のような剣撃の雨!くっ、躱すのに精一杯で、近づけない!
警察官:......あのー、そこの君。
時雨:ならば、こちらも奥義だ!水よ、嵐を*《まと》纏いて、その力で敵を蹂躙せよ!メイルシュトローム!!
倉島:飲み込まれる!?ぐあああああっ!!
警察官:(大声)あのォ!!!
倉島:......えっ?
時雨:......あれ?どうかしました?
警察官:......なに、なさってるんですか。
倉島:い、いや、これは、その......
時雨:あれ?もしもし?カゲツさん?聞こえてます?ミュート出来てませんよ?
警察官:何を!なさってるんですか?
倉島:こ、これは......その......
時雨:あれ?なんかヤバくないですか!?大丈夫ですか、カゲツさん!?
警察官:とりあえず、身分証ありますか?
倉島:えっ。
警察官:見せてください。
倉島:あ、わ、はい。
警察官:倉島圭一......さん。
時雨:おい、実名!
倉島:え、演劇の練習を......
警察官:こんな早朝に、河川敷でですか!?
倉島:そ、それは......そうです、けど。
警察官:ほう......演劇?
倉島:は、はい......いわゆる、その......声だけでやる演劇で......
時雨:あっ、やっぱり職質じゃないですか!?
倉島:ちょ、時雨さん!静かに......!
警察官:......今、通話してます?
倉島:あ、はい......相手役の方です......
時雨:はじめまして!私はマギ・レファイラを師とする法術士、ネロで──
倉島:違います!演者です!ただの!
警察官:えー......。
時雨:あ、すみません、今は素の方がいいですか?
警察官:素の方でお願いします。
時雨:あ、はい。えっと......時雨って名前で、ネット経由で声劇してます。
警察官:声劇。
倉島:声劇、です......。
警察官:......早朝に?
倉島:早朝です......。
時雨:朝の河川敷って、声がよく通るんですよ〜。
倉島:今そんなこと言わなくていいです。
警察官:......さっきの叫び声、「決闘」とか「奥義」とか聞こえましたけど。
倉島:あ、あれは台本上の演出で......
時雨:私は嵐を纏ってました。
倉島:黙って!
警察官:......喧嘩では?
倉島:違います!
時雨:殺陣はありましたけど、フィクションです!
警察官:殺人?
倉島:読み方ァ!それはタテって読むんだよ!
警察官:......いや、全部聞こえてたんですよ。
倉島:え。
警察官:「我が剣の錆にしてくれる」とか。
時雨:名乗り、かっこよかったですよね。
警察官:「メイルシュトローム!!」って。
倉島:ああ......。
警察官:正直に言うとですね。
倉島:は、はい......。
警察官:めちゃくちゃ怪しかったです。
倉島:ですよね......。
時雨:すみません。
警察官:でも。
倉島:......でも?
警察官:途中から、ちょっと気になって聞いちゃって。
倉島:......え?
警察官:剣闘士と法術士の因縁、どんな設定なんですか?
倉島:えっ。
時雨:えっ。
警察官:いや、その......仕事柄、話は最後まで聞かないと。
倉島:はあ。
時雨:じゃあ......続けます?
倉島:待って!?
警察官:本当に問題がないか、確認する必要がありますので。
時雨:ミツルギが大ダメージ受けたところから、です。
倉島:ええ、ほんとに続けるの!?......人に、しかも警察に見られながら!?
警察官:ラスト、どうなるんです?
倉島:え。
時雨:聞きたいですよね!
警察官:......私、気になります。
倉島:......わかりました!
時雨:では、ミツルギの台詞から。3,2,1,アクト!
倉島:わ、我が敗北は、運命か......いや。我はここで負けるわけにはいかぬ!
時雨:貴様を打ち倒し、その宝具"桔梗一文字を私の祭壇に捧げ、究極の水魔法を完成させるのだ!
倉島:......ストップ!
時雨:......え?
倉島:これ、バカ恥ずかしい!
警察官:いいえ、続けてください。
時雨:その通り。止まる理由はないよ。
倉島:いやだ!親に横で聞かれてるくらいにはいやだ!
時雨:あーーー、それはそう。
警察官:でも、趣味で演劇をされているんでしょう?
倉島:いや、それはそうなんですけど!
警察官:感情解放が、まだお済みではない?
倉島:それで捨てられる恥とは別の種類の恥ですよ!
警察官:......まあ、近隣住民から苦情が来るような迷惑行為ではないみたいですし。
倉島:ほ、本当ですか......!
警察官:ただし。
倉島:は、はい!
警察官:次にやる時は、もう少し......声量、抑えてください。
時雨:次回は屋内にします!
警察官:......それが一番ですね。
倉島:すみませんでした。
警察官:はい。──それはそれとして。
倉島:え?
警察官:最後まで上演してください。
倉島:ええ!?
警察官:気になるんですよ、結末。
倉島:ああもう──分かりましたよ!やります、やりますから!時雨さん、お願いします!
時雨:わ、わかりました。こちらとしても、途中で終わるのはモヤっとするので。お願いします。ミツルギの台詞からですよ!
警察官:では、お願いします。
:(警察官に見られながら、劇終了。)
倉島:ありがとうございました!
時雨:ありがとうございました!
警察官:お疲れ様でした。......あの。
倉島:はい。──なんですか?満足しました?
警察官:一つ、いいですか。
倉島:は、はい。
警察官:その......私も、参加していいですか。
倉島:......え?
時雨:え?
警察官:いや、ほら......さっきから聞いてたら、楽しそうだなあって。
倉島:え、いや、それは......。
時雨:いいじゃないですか!!
倉島:ちょっと!
警察官:──実は、元演劇部なんですよ。
倉島:あ、それで興味を?
警察官:そうなんです。だから、最初から演劇の練習か何かなんだろうなぁ、とは思ってたんです。
時雨:そしたら、舞台演劇っぽいやつ、一緒にやってみます?
警察官:いいですね!すごく興味があります。
倉島:ここまでノリノリな警察官見たことないな。
時雨:では、これやりましょう!
倉島:『暁に、立つ』か。
警察官:台本、見づらいんですけど、どうしたらいいですか?
倉島:アプリ入れてください。これです。ボイストランド。
時雨:アカウント出来たら、一緒の枠で上演しましょう!フォローします。
警察官:分かりました。名前、何にしよう──これで、よし、と。
倉島:アカウント、出来ました?
警察官:はい。これです。
倉島:......"かぼすぼたん"?えっ、かぼすぼたん!?
警察官:昔、使ってた名前なんですよ。
倉島:以前、ご一緒した事があります!サーバーで!カゲツって言います!
警察官:どんな劇してました?
倉島:バチバチのバトル台本です!私がヒーローの少年役で、あなたがヴィラン側のボス役でした!
警察官:......ああ!あの時の!
倉島:3年くらい前ですね。まさか、こんなところで......お会いできて光栄です!
時雨:そこ知り合いだったんだ。てか、声劇知ってたんじゃないですか!
警察官:いや、分かってはいたんですけど。その方が面白いかなあって。
倉島:ははは!じゃあ、お近づきの印に、一劇、やりましょう!
時雨:わかりました!宜しくお願いします!
警察官:はい!お願いします!
:(アプリ内、倉島=カゲツ枠にて)
倉島:リスナーの方々、少しだけお待ちください!
警察官:マルチ、上がります......宜しくお願いします!って、うわ!めっちゃ反響してる。
倉島:すぐ横に居るから、そりゃそうなりますって!そちら側、ミュートにしてください!
警察官:ミュートって、どのボタンですか?
倉島:右下のボタンです!
警察官:ああ、わかりました!大丈夫です。
時雨:音、オッケーです!
倉島:では、枠の時間も余裕ないんで、始めちゃいましょう!
:(上演準備完了ボタンを押す。静寂に包まれる。)
倉島:では、始めます......上演前トークです!作者、よんさんで、『暁に、立つ』お借りします!配役紹介いたします。ブレイズ役を?
時雨:ブレイズやらせていただきます!時雨です!まさかの事態ですが、楽しんでやらせていただきます!宜しくお願い致します!
倉島:ほんとね、ビックリさせてスミマセン!宜しくお願いします!続いて、ノート役を?
警察官:ノート役を、かぼすぼたんが務めます。久しぶりの声劇、楽しみです。宜しくお願い致します!
倉島:よもやよもやって感じではありますが、また再会出来て感激です!そして、最後に。アクト役を、カゲツが読ませていただきます!皆様、最後までどうぞ宜しくお願い致します!それでは、上演開始!
:(重い空気。舞台に立つ三人。息遣いがわかる距離。)
警察官:(ノート)......なあ。正直に言う。俺は、怖いんだ。この舞台に立って、何も返ってこなかったらって思うと。拍手も、評価も、意味もなくて──それでも立ってる自分が、一番滑稽なんじゃないかって。
時雨:(ブレイズ)滑稽で、何が悪い。笑われても、否定されても、憐れまれたって。それでも足が動くなら、そっちの方がずっと人間らしい。
警察官:(ノート)そんなのは綺麗事だ。意志だけじゃ、食えない。意志だけじゃ、生き残れない。俺は......それを、何度も見てきた。
倉島:(アクト)──それでも、俺はここにいる。
警察官:(ノート)何故だ。お前は、何を信じてここに立っている?
倉島:(アクト)信じられるもの?そんなのは、"自分だけ"だ。この舞台を降りる理由より、立つ理由の方が、ずっと、俺の中で強く輝いているだけだ。
時雨:(ブレイズ)そうだ。その"理由"のために、俺たちは何年も、この"意志"の力を燃やしてきたんだ。
:(ブレイズ、感情を抑えきれず前へ)
時雨:(ブレイズ)俺も一度、全てを捨てた。舞台も、声も、夢も。"向いてない"って言葉を、自分の中で何度も何度も反芻して、最後には、自分で自分を黙らせた。
時雨:(ブレイズ)それでも、消えなかった。腹の底で、「舞台に立ちたい」って感情だけが、何度も、何度も!──焼け残った中に、本当の俺がいた。
倉島:(アクト)......意志は、才能より弱い。環境にも、運にも勝てない。──でもな。
:(アクト、舞台を踏みしめる。"意志"を示すように)
倉島:(アクト)最後まで残ってるのは、「それでも立つ」って決めた自分だけだ。逃げ道を探すのも良い。言い訳を並べ立てて、喚いたって。だが!それで何が変わる!?お前の中にある"意志"は、その程度で揺らぐものなのか!?
警察官:(ノート)......俺は、ずっと逃げ道を探してた。理屈を並べて、「今じゃない」「意味がない」って言い訳して。──でも。今、ここに立ってる。
時雨:(ブレイズ)きっと──逃げきれなかったんだろ。
警察官:(ノート)ああ。舞台に立つ自分を、嫌いに"なりきれなかった"。
:(三人、互いを見る)
倉島:(アクト)才能がなくたって、いい。
時雨:(ブレイズ)評価されなくてもいい。
警察官:(ノート)報われなくても......それでも。
:(背景に光が差す。暁に照らされ、三人の影が現れる。)
倉島:(アクト)俺は、立つ。
時雨:(ブレイズ)燃え尽きるまで、立つ。
警察官:(ノート)怖くても、疑っても......立ち続ける。
:(空の客席を前に、役者達は謳う。)
倉島:(アクト)これが、俺たちの武器。
時雨:(ブレイズ)折れない"意志"だけを、両手に握って。
警察官:(ノート)それでも、舞台に立つという選択を。
警察官:(ノート)......誇りに思える。俺はここにいる!
警察官:(ノート)──暁よ、照らせ!!
:(幕が降りる。)
倉島:ありがとうございました!作者、よんさんで『暁に、立つ』でした!お疲れ様でした!
時雨:ありがとうございました!
警察官:ありがとうございました〜。
倉島:──どうでした?久しぶりの声劇は。
警察官:いや、よかったです。内容も含めて。やっぱり、楽しいですね。
時雨:ですよね!この機会に、復帰してみても良いんじゃないですか?
警察官:......そう、ですね。でも。
倉島:でも?
警察官:......家の中だと、出来ないかなあ!家内に怒られるし!
倉島:じゃあ、私とまた、河川敷でやりましょうよ!
警察官:一緒に不審者扱いですか?
:(笑い合う3人。──近くで、ラジオ体操のメロディが聞こえる。)
時雨:ははは、なんかラジオ体操の曲聞こえますよ。
警察官:ご近所のおじいちゃん達だ。
倉島:あっ、やべ!もうそんな時間だったんだ!
警察官:そしたら......混ざっていきます?
倉島:混ざりませんよ!!